窓工事に欠陥があった新築住宅の建築を請け負った施工会社の責任
【 国民生活HPより転載 】
本件は、新築住宅の木製窓から雨水が侵入したのは、
材料の選定や設置作業に欠陥があったためであるなどとして、
その設計と木製窓等の設置工事を請け負った施工会社に対し、損害賠償等を求めた事案である。
裁判所は、設置作業に欠陥があったことなどを認め、
請け負った施工会社は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」
(以下、品確法)94条1項に定める責任を負うとした。
また、請け負った施工会社の責任を注文者が追及できる期間
(除斥期間)である10年はまだ経過していないとして、
請け負った施工会社の注文者に対する損害賠償請求を認めた(東京高裁平成25年5月8日判決)。
- 『判例時報』2196号12ページ
事案の概要
- 原告・控訴人:
- X1・X2(消費者)
- 被告・被控訴人:
- Y1(本件建物を設計監理し、本件木製窓等を施工した会社)
- Y2(Y1の代表取締役)
- Y3(Y1の従業員で本件建物の設計者)
- 関係者:
- A(Xらが土地を購入し、建物建築を依頼した工務店)
- B(Xらが当初依頼した建物設計会社)
- C(木製サッシの修理業者)
X1らは、2001年2月、診療所兼住宅(以下、本件建物)を建築するため、Aから土地を購入するとともに、 Aに建物の建築を依頼(建築請負契約)し、B社に本件建物の設計を依頼した。 その後、X1らは、本件建物を南欧風の建物にしたいと考え、B社との設計監理契約*1を解除した。 X1は、同年8月、雑誌で知ったY1に建物の設計を依頼(以下、本件設計監理契約)した。
Y1の設計では、屋根をイタリアン瓦にし、窓や窓枠も木製に変更された(本件木製窓等)。 X1らはAとの本件建築請負契約とは別に、Y1との間で、2002年6月、木製窓等、 作り付け家具等に関する材料を購入する契約とそれらの施工請負契約を締結した。 Aは、2003年7月末頃、本件建物をX1らに引き渡した。しかし、この引渡し前の同月中旬頃、X1とY3は、 現場の残材の引き取りの件などで口論となり、Y3らは現場から材料を引き上げた。 そのため、X1らはY1による完了検査を経る前に本件建物に入居し、 その後も完了検査は行われないままとなった。
2003年8月9日、台風による大雨が降った際、 ある窓の障子下部から大量の雨水が流れ込み、同月15日と翌16日には他の窓から雨水が浸入した。 X1らは、その都度、Y1に修理を依頼し、Y1は、同月下旬、これらの修理を行った。 しかし、その後も大雨の後などに修理した窓を含め窓から雨水の浸入が続いたため、 X1らは、Y1らが十分な対応をしてくれないとしてY1に連絡を取らなくなった。 2005年9月、X1らは、一部の窓にはシャッターを取り付け、雨水の浸入を防いだが、 この頃から他の窓も黒く変色し、2006年頃になると木材が腐り始めたため、X1自ら修理をした。
2007年10月に調査依頼をしたCからは、腐食が激しく取り替えが必要な窓があり、 他の窓も防水工事が必要だと報告を受けた。 2008年2月7日、X1らは、Y1らに対して訴えを提起し、 Y1らが欠陥のある窓・窓枠を選択したこと、適切な止水措置を取らなかったことなどを主張して、 不法行為による損害賠償(X1・X2に各々約1045万円)を請求した。 また、不法行為が認められなかった場合の予備の主張として債務不履行や 瑕疵(かし)担保責任*2による損害賠償(不法行為による主張と同額)を請求した。 原審は、本件木製窓等には固有の瑕疵*3は認められず、 Y1らの部材選択には事業者として払うべき注意が払われていたとした。 そして、1カ所の窓については、瑕疵担保責任が追及できる期間内 (欠陥があることを知ってから1年間)に損害賠償請求がなされていると認めたものの、 他の窓については責任の追及ができる期間の経過により請求することはできないとして、 1カ所の窓の損害賠償として約1万7000円の損害賠償のみを認めた。 X1らはこれを不服として控訴した*4。 |
*1 設計監理契約とは、設計、施工業者との調整、各工程の確認、
引き渡しの立会い等の一連の業務を依頼する契約のこと。
*2 瑕疵担保責任とは、売買の目的物に通常の取引において必要とされる注意をしても
気付かなかった品質の欠陥があったときに、売主が買主に対して負う責任のこと。
*3 瑕疵とは、取引上普通に要求される品質・性質を欠いている状態、欠陥のこと。
*4 Y1は請求全部の棄却を求めて附帯控訴した。
理由
1.窓等の構造および設置上の瑕疵について
本件木製窓等に構造上の固有の瑕疵があると認めることはできないが、
一部の窓は障子のガラスと枠の接合が不十分であったり、
窓全体を均一に窓枠に圧着するという調整が不十分であり、
ある窓については、ガスケット*5の取り付け方法に不備があり、
それぞれ設置作業における瑕疵があったと認められる。
2.窓等の防火認定に関する瑕疵について
本件建物に設置する窓については防火認定を受けている必要があるが、
本件では木製窓等のうち、一部を除き複数の窓につき防火認定を受けていないという
瑕疵があると認められる(この瑕疵は、控訴審においてX1らにより主張されたもの)。
3.除斥期間の経過について
品確法94条1項は、「雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵については、
引渡時から10年間担保責任*6を負うと定めている。
本件木製窓等の設置や防火認定に係(かか)る瑕疵は上記の瑕疵に当たる。
そして、本件木製窓等は本件建物の引渡しと同じ2003年7月にX1らに引き渡されていると認められる。
その後、X1らは2008年2月7日にY1に対して本件訴訟を提起しているから、
品確法における瑕疵担保責任を追及できる期間(除斥期間)である10年は経過していないというべきである。
なお、この点について、Y1は、本件では品確法94条にいう住宅新築請負契約における
「請負人」(請け負った施工会社等)はAであって、Y1ではないから同条の適用はないと主張する。
しかし、Y1は、本件新築建物に設置する本件木製窓等の施工部分について
X1らとの間で請負契約を締結したものであるから、同条の「請負人」に該当するというべきである。
防火認定を受けていない瑕疵や設置上の瑕疵による修理の工事費用の損害は、
514万円余となり、X1・X2の両名に対し各々約245万円の損害賠償を認めた(5%の過失相殺*7)。
*5 ガスケットとは、隙間を塞いで雨水等が入ってくるのを防ぐもののこと。
*6 担保責任とは、取引の目的物が普通に要求される
品質・性質を欠いていた場合にそれを補うための責任のこと。
*7 過失相殺とは、請求者側にも不注意があった場合にそれを考慮して
裁判所が賠償額を減額すること。
【 原文 】
国民生活センター
2015年7月「窓工事に欠陥があった新築住宅の建築を請け負った施工会社の責任」より抜粋