ソルベントクラック(溶剤亀裂)により破損した洗面台
【 国民生活センターHPより転載 】
化粧品や洗剤などの溶剤が付着してユニット洗面台のプラスチック部分に亀裂が生じ、破損に至った事例を紹介する。
相談内容
ユニット洗面台の扉に取り付けられている三面鏡を支えるプラスチックが破損し、鏡が落ちそうで危険な状態である。
メーカーは、劣化の原因は化学反応によるものと言うが、鏡の後ろの物入れには歯磨き粉などを入れているだけである。注意書きには除光液、パーマ液が付着した場合は劣化するおそれがあると書いてあるが、詳しい説明は受けていない。支えに使っている材質が不適切なのではないか。
相談処理経緯
相談を受けた消費生活センター(以下、受付センター)は、メーカーに相談内容を伝え、相談者がメーカーに写真を送った。
その後、メーカーからは「亀裂が生じた部位にHIPS(耐衝撃性ポリスチレンHigh Impact Polystyrene)を使用しており、化学反応による亀裂が生じた」との答えがあった。
受付センターは、相談者が亀裂の発生原因の追及を求めていることをメーカーに伝えたが、メーカーからは、原因追及はできないが扉を無償交換すると回答があった。
相談者は無償交換だけではなく亀裂の発生原因の究明を求めて、国民生活センター(以下、当センター)に商品テストを依頼し、メーカーが取り外した扉および相談者が日頃から使っている化粧品や洗剤などの溶剤リストを当センターに送付した。
商品テストの結果、次のことが分かった。
- 苦情品の三面鏡(開き扉の構造)の中央の1枚は、下部のプラスチックが2箇所破損し、一部に破片が残っていた。
- 破損箇所の周辺やプラスチックカバーには水気があり、茶褐色の汚れが付着していた。
- 苦情品のプラスチックの主な材質はポリスチレンであった。
- 破損箇所の破面を観察したところ、ソルベントクラック(溶剤亀裂)を生じており、応力*1や外力などによって段階的に亀裂が成長した跡が見られた。
- 苦情品のプラスチックは、苦情品の鏡に付く可能性のある化粧品や洗剤などの溶剤でソルベントクラックを生じて脆(もろ)くなった。
以上、三面鏡を支えるプラスチックは、鏡に付いた化粧品や洗剤などの溶剤が垂れて溜まったことが原因でソルベントクラックを生じたため脆くなり、扉の開け閉めの際の衝撃(外力)や何らかの応力などによって段階的に亀裂が成長し、破損に至ったと考えられる。
三面鏡に付いた薬剤などにより、支えているプラスチックがソルベントクラックを起こした可能性があるという商品テストの結果を相談者に報告したところ納得された。
ソルベントクラックとは、成形品中に溶剤などが浸透拡散されることによって、分子間の剥離(はくり)が生じクラック(亀裂)に至るものである。その破面はナイフでスパッと切ったようなきれいな鏡面を示すことが特徴であり、引っ張りなどの外部応力で破壊される延性破壊や、強い衝撃での脆性(ぜいせい)破壊で引き起こされる破面周辺の白化現象などとは異なる(大武義人「ゴム・プラスチック材料のトラブルと対策」日刊工業新聞社より抜粋)。
- *1 物体に外力または変形を与えたときにその物体の内部に生ずる力。
同種事例
「洗面化粧台のプラスチックの棚に亀裂が入った。化粧品等によるソルベントクラックと言われたが納得できない」など、化粧品や洗剤などの溶剤により洗面台に亀裂が入ったという相談が複数寄せられている。
取扱説明書や洗面台本体に「化粧品、整髪料、芳香剤、洗剤などが付着した場合は、すぐにふき取ってください。化粧品や洗剤の中にプラスチックに悪影響を与えるものもあります。放置するとヒビ割れや変形が発生して部材が破損・落下し、ケガをするおそれがあります」等の表示があるとして、消費者の使用方法を指摘されるケースもみられる。
薬品・化粧品等の保管・使用の際は、溶剤が漏れないよう注意し、付いてしまったときはすぐにふきとる。洗剤・洗浄剤を使用する際は、「用途」「使えないもの」等を確認し、使用法を守る。
化学製品PLセンターやキッチン・バス工業会のホームページ上の資料「樹脂部品に発生するケミカルクラックについて」では、亀裂が入ったまま使用を続けると亀裂が広がったり、製品全体が破損することもあり、また、けがをするおそれもあるため、早急に対象部品を交換する必要があり、購入先や取扱説明書にある相談センター等に連絡するよう記載*2をしている。
【 原文 】
ソルベントクラック(溶剤亀裂)により破損した洗面台
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/201303_1.html