一般社団法人工事金額適正化推進協会[PARCC]リフォーム工事金額の適正化を推進し、リフォーム業界の地位向上,悪徳業者、悪質業者の排除を目指します。

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特商法を理解しようとしないリフォーム業者

【 国民生活センターHPより転載 】

 

≪過去の被害事例をご紹介します。≫

今回は、電話でのクーリング・オフを認めず、施工内容も手順もずさんだったリフォーム工事の事例を紹介する。

相談内容

 母が電話でリフォーム業者から屋根の無料点検を勧められた。断わったが、あまりにしつこく勧誘され仕方なく、家族の在宅中に来訪するよう条件を付けたうえで無料点検を了承した。

 業者が来訪し、自宅の屋根を撮影したビデオを見せられた。自宅は築30年近く経っているため、屋根瓦にはヒビやズレが多く、また、窓などサッシの工事もしたほうがよいと勧められ、屋根工事・サッシ取り替え工事約470万円の契約をした(クレジットで120回払い)。

 しかし、契約書を記入する段階になって見積書がないことに気がつき、そのことを指摘すると、「建築用語は素人には分かりにくいため、工事契約書で分かりやすくしている」という要領を得ない回答であった。そこで内訳書でも構わないので持ってきてほしいと依頼したところ、「保証書と一緒に持ってくる」とのことであった。

 しかし、その後に家族で再度話し合った結果、断わることに決め、契約から2日後に契約解除の電話をした。ところが、業者はその日の夜になって「解約したいという電話を受けたが、解約の理由を明確にしてほしい」と突然来訪した。家族で改めて話を聞いたが、業者は工事の流れ(材料や腕のいい大工を派遣する等)ばかりを話し始めた。結局、解約するのはやめ再契約することになった。

 だが、数日後に業者が来訪し「クレジットの審査が通らなかったので、別のクレジット会社にしてほしい」といわれてクレジット書面を書き直したが、その際、業者に「工事が完了したことにしてほしい」といわれ、業者の指示どおりに父が記入した。

 また、再度、内訳書がほしいと伝えたが、「保証書と一緒に持ってくる」とのことだった。
 しかし、実際に工事が始まると、施工内容も手順もずさんで、予定どおりに進まず、工事人のミスで部屋の中の物が壊されたりした。工事終了後も内訳書や保証書等の書類を交付してくれない。工事はすでに完了しているが、家族全員、納得できない。

(20歳代 女性 給与生活者)

処理概要

 当センターでは、契約から2日後に契約を解除する旨の電話をしているにもかかわらず、業者は突然来訪し、再度勧誘している点がクーリング・オフ回避に該当すると考えられる。

 また、仮に再勧誘行為がクーリング・オフ回避に該当しないとしても、再契約を締結したのであれば、改めて再契約日の日付で書面交付が必要となるが、契約書は2日後の再契約の際に交付しておらず、書面不交付として、クーリング・オフが可能と思われた。工事内容についても書面に詳細な記載はなかった。

 これらの問題点を考慮した結果、当センターは無条件解約が妥当と判断し業者に交渉したが、業者は「特定商取引に関する法律」(以下特商法)を全く理解しておらず、さらに理解しようとする姿勢もなかった。業者は「法律がどうであれ、工事はすでに完了している。ある程度の金額は払ってもらわないと困る」という主張を繰り返すのみであった。

 その後、業者は本件を弁護士に一任したが、当該弁護士も特商法の理解が低く、関係法令や判例も全く知らない状況だったため、交渉は難航した。

 数回にわたり弁護士と交渉したが、やがて業者と同じように、「ある程度の金額は払ってほしい」との主張を繰り返すようになった。

 そこで、当センターからクレジット会社に本件について連絡し、加盟店指導を依頼した。
 その結果、信販会社はクレジット契約をクーリング・オフ扱いとし、既払い金(約30万円)は相談者に返金されることになった。これにより業者から相談者に対し、工事代金の請求が直接行われることになるが、上記のように、業者側の法令違反は明白であり、仮に業者が提訴しても業者側が勝訴できる余地はほとんどないと判断したため、その旨を相談者に伝え、相談を終了とした。

 なお、相談者は施工部分に関して原状回復(施工前の状態に戻すこと)を望んでいなかったため、業者とその旨の交渉は行わなかったが、仮に相談者が希望すれば、業者は無償で原状回復を行う義務を負うことになる(特商法第9条7項)。

問題点

 今回は業者の対応が非常に悪く、信販会社に加盟店指導を依頼したところ、信販会社が相談者のクーリング・オフの申し出を認め、返金の手続きが行われ解決が図られたものである。

 本件では大きく3つの問題点があると思われる。

1. クーリング・オフの方法として、特商法第9条は「書面により(中略)撤回又は(中略)解除を行うことができる」と定めているが、口頭によるクーリング・オフを有効と認める判決が複数出ている。
2. 消費者のクーリング・オフ行使後、業者が解約を阻止するために、消費者に対して不実のことを告げたり、威迫して困惑させる行為等を行うことが多い。本件では、突然来訪し、再勧誘を行っており、場合によっては特商法第6条の「禁止行為」に該当する可能性がある。
3. クーリング・オフにより、当初の契約は解除されており、再契約の締結時点で、業者に改めて書面等の交付義務が発生すると解される。

 業者は関係法令を理解せず営業活動を行っており、また、理解しようとする姿勢も極めて希薄であった。

 「法の不知はこれを許さず」という法諺(ほうげん)があるが、「知らなかった」という言い訳は通用しないのである。企業にとって関係法令の順守は当然の義務であるという認識を持ってほしい。

 

【 原文 】
特商法を理解しようとしないリフォーム業者
http://www.kokusen.go.jp/jirei/data/200305.html